仲秋に

仲秋に          

 

まとうもの について考えた

言葉としても

時間としても

その肌触りとしても 考えた

 

なぜ まとうのか

なにを まとうのか

なにに まとうのか

 

この口にして空虚な自問たちに

「あの人は」

という接頭語を寄せてみた

 

あの人は なぜまとうのか

あの人は なにをまとうのか

あの人は なににまとうのか

 

すると途端に 慈しみに満ちた

散文詩となった

また同時に

慈しみなくして問いかけることのできない

ズルい性根にも 気がついた

 

きっと 男である私は

理由という遺伝子を失って

生まれてきたのだろう

 

欠落の恐怖に 呑み込まれないように

まとってきた 全てのことどもを

今 ようやく

月の光の下に 林檎を一つ差し出すように 

置き並べることが出来る

 

やがて

言葉も 時間も

全てのまといを解きえる日

あの人のまといの内に

静かに うずまりたい

 

静かに うずまりたい